「法律って難しいんでしょ?」
私が会ってきた法律を勉強したことが無い人の多くはこんなイメージを持っていました。
このイメージはあるところまでは正しいです。
私は、大学生時代の大半を法律の勉強にあててきましたが、難解な法律分野は存在し、今でも理解するのに一苦労する箇所があります。
難しく書かれているために、自分とは遠い場所にある学問だな、と敬遠しがちになってしまうということも否定できません。
しかし、実際には自分の周りでも起きそうな『ちょっと変わった事件』が多数存在し、そこで白熱した議論が行われているケースも稀にあります。
今回はそんなちょっと変わった事件にスポットを当て、紹介していこうと思います。
ケース①「参観日の欠席記録を取り消せ!」宗教一家の主張
皆さんの学生時代の参観日はどのようなものでしたか?振替休日があるとはいえ、日曜日に出席を求められ憂鬱になっていた人も少なくないのではないでしょうか?
この事件では、日曜日に参観日を行った小学校に対し、それを欠席した児童の欠席記録を取り消せと原告(訴えを起こす側)が主張しました。
なんでも、この家族はキリスト教信者で、その児童は日曜日には教会に行かなければならなかったとのことです。
「憲法には信教の自由があるが、このような参観日はその自由を制限する」というのが原告の主張だったのですが、結果は敗訴となりました。
要約すれば、「確かに信教の自由は大事だけれども、学校が日曜日に参観日をするのは違法でもないし、そこまでおかしいことではない。
さらに、それで児童が不利益を被ることもない。」として、裁判所は原告の主張を退けました。
言われてみれば、それはそうだとも思える事件でしたね。
ケース②盗んだものはちり紙!これって窃盗罪?
鼻がムズムズしてきたから、友達の机からティッシュを1枚…。これが窃盗罪になるのでしょうか?
平たく言えば、窃盗罪は、「他人の財物」を「自分が使用する目的で盗む」と成立する犯罪ですが、この場合『ティッシュ1枚』は財物と言えると思いますか?
実はこれと似たような問題が起きた事件があります。
この事件では、ちり紙13枚を盗んだ事件でした。
裁判所はこの事件において、「主観的にも客観的にも価値がない、あるいは、極めて小さい場合には『財物」とは言えないから、ちり紙13枚は財物とは言えない」としています。
「じゃあ、ティッシュくらい大丈夫」と思ったあなた、少し待ってください。
この事件の面白いところは『スリ』の事例であったという点です。
つまり、本当は財布などを盗もうとした結果、ちり紙を盗んでしまったというケースで、最初からちり紙を盗もうとしていた事件ではないということです。
初めからティッシュを盗もうとして、現に盗った場合は十分に犯罪になり得るため、しっかり友達の許可を取りましょう。
(「ティッシュ1枚で犯罪」とか言う友達はイヤですが…)
ケース③「単位が取れない!ならば訴訟だ!」大学生たちの闘い
遊びに、バイトに精を出す大学生活でも、本文は学生です。
やはり、進級・卒業のために単位は不可欠です。この事件では、単位を取れなかった学生たちが、学校側が単位を授与しなかったことを違法として争った事件です。
どうやら、この学生らが受講していた教授側に問題があり、学校側が「代わりの科目を履修しなさい」と指示を出したところ、学生はそのままその教授の授業を受けました。
学生は単位認定要件を満たしましたが、学校側はこの単位を認めなかったようです。
「そんなの勝手にやってくれ…」との声も聞こえてきそうですが、裁判所も同じように、「単位の認定は純然たる大学内部の問題だから、特別な事情でもない限り立ち入りません」とのことでした...
まとめ
紹介したこれらのケースは実際にあった事件です。
ケース1、3は憲法の、ケース2は刑法の本を読むとより詳細を把握することができます(特に、憲法にまつわる2つの事件は、法学部界では有名です)。
もちろん、ここに書いたことが事件のすべてではありません。
今回の記事ではだいぶ省略して書きましたが、法学部で勉強する際には、もっと複雑かつ詳細な事実と裁判所の判断を読み解くことになります。
しかし、こんな風に、実際の事件を見ると少し法律が身近に感じられたのではないでしょうか?興味を持った方は、ぜひ一度法律の本を手に取ってみることをお勧めします。