日常生活において、口約束をする場面ってたくさんありますよね。
飲み会の約束、デートの約束、物の貸し借り...
これらの約束を守るためにいちいち文書を作成して印鑑を押して…なんてする人はまずいないと思います。
ところで、これらの約束を破ったらどうなるのでしょうか?
友達との約束であれば謝って済むことかもしれませんが、例えば大金や高額な物の貸し借りになると「ごめん」では済まなくなります。
特に契約について書面で残していない場合、訴訟まで発展する可能性もありますよね。
そこで、今回の記事では「口約束でも効力があるのか」「法律上はどうなっているか」を見ていきたいと思います。
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基本的には口約束でも有効になる!
日本の法律(特に民法)では、「意思」が重視されています。
意思とは、「ああしたい」「こうしよう」といったその人の内心のことですね。
現在の法制度では、この意思が表示(これを「意思表示」と言います)され、その意思表示が当事者間で合致すれば、契約が成立します。
少しむずかしい言い回しをしてしまいましたが、平たく言うと...
Aさんが「これ買わない?」という発言をし、Bさんがそれに対して「うん、いいよ」と言えば、互いに売買の意思表示が合致するため、契約が成立します。
つまり、口約束でも契約が成立することになります。
少し専門的な知識になりますが、民法には典型的な契約について規定されている条文がいくつかあります(いわゆる「典型契約」)。
このうち、売買(物の売り買い)や贈与(物をあげる)等の多くの契約は、意思表示の合致だけで契約が成立します。
これらの意思表示だけ(要は口約束でも成立する)契約を総称して「諾成契約(だくせいけいやく)」と言います。
口約束だけでは成立しない契約もある!
一方で、口約束だけでは成立しない契約もあります。
先ほど説明した「典型契約」のうち、消費貸借(お金の貸し借り)、使用貸借(物の貸し借り)は、口約束だけでは契約は成立しません。
つまり、「お金を貸してあげる」との発言だけでは、契約は成立しません。
これらは、意思表示するのに加えて、実際に貸す物を相手に渡さなければ契約は成立しません。
このような契約のことを、「物が必要な契約」なので、「要物契約(ようぶつけいやく)」と言います。
こんな場合にも口約束は効力を持ちません!
先ほどは「口約束でも契約は成立する」と言いましたが、諾成契約(だくせいけいやく)でも契約が成立しない場合もあります。
例えば、麻薬の売り買いなどは法律に反する行為なので、「公序良俗(こうじょりょうぞく)」違反として、無効になります。
他にも、見栄を張ってキャバクラのホステスに「一億円あげるよ」という口約束は「心裡留保(しんりりゅうほ)」と言って、原則有効ですが、「それが嘘だ」ということが見え見えの場合には無効となるケースもあります。
さらに、「馬のぬいぐるみだと思って買ったら牛のぬいぐるみだった」といった勘違いも、「錯誤(さくご)」といって無効になることもあります。
ただし、錯誤で口約束が無効になるケースは非常に稀です。
口約束は非常に危険!なぜなら…
ここまで、口約束の効力の有無を述べてきましたが、契約の中身が大きくなるのであれば、書面を残すことをおすすめします。
というのも、契約の当事者間で揉めてしまえば、最終的な解決は裁判所や弁護士に頼ることになります。
こうなるとやはり証拠として書面が残っていないと契約の有効を主張できません。
これは、民事訴訟のルールとして、「契約の成立を主張したい人が、その成立を立証すべき」というものがあるためです。
よって、「口約束でも法律上は有効だ!」と言ったところで、証拠がないとその効力は発生しません。
まとめ:口約束は原則有効だけど...
今回は、口約束の有効性を説明してきましたが、確認したいのは以下の点です。
① 原則的に口約束は有効
② 契約の種類によっては契約が成立しないものもある
③ ②に当てはまらなくても、効力を持たないものもある
以上の3点です。
また、口約束でも結局は証拠として書面を残しておいた方が良い事も紹介しました。
皆さんも安易な口約束には十分注意して日常生活を送ってくださいね。