大学4年生にある大学生活最大の壁、それは「就職活動」です。
3年生のときから激化する就職活動は、大学生に多くのハードルを課してきます。筆記テストのための勉強に、面接のためのネタ作り、または面接のための履歴書作成などやらなければならないことはたくさんあります。
ところで、この就職活動のための履歴書(社会人の方が転職する際の履歴書も同様)ですが、嘘の情報を書いたらどうなるのでしょうか?
そこで今回は「履歴書に嘘の情報を書いたらどうなるのか」について書いていこうと思います。
そもそも「罪」とは?
「罪」とは何でしょうか?
すごく哲学的な問いに聞こえますが、現在の日本の刑法(「どのような行為が犯罪になるか」を定めた法律)によれば、「構成要件に該当する違法かつ有責な行為」と定義されます。
難しく言っていますが、平たく言えば「法律に定められた行為を違法な形で正常な大人がした」場合に犯罪となります。
ここで言う「違法」は正当防衛等の仕方ない事情がないこと、「正常」とは酒に酔っている等の事情がないことを言います。
さらに確認したいのは、「構成要件に該当する」という点です。
刑法には構成要件という形で、犯罪になる条件のようなものがあります。
この条件を全て満たした場合に初めて犯罪となり得る行為となるのです。
逆に言えば、一つでも犯罪成立の条件を満たさない場合には犯罪は成立しません。
問題となるのは「詐欺罪」と「私文書偽造罪」
さて、今回の「履歴書に嘘の情報を書く」という行為ですが...
①嘘をついて面接官(もっと言えば会社)を騙しているため「詐欺罪」
②嘘の文書を書いているため「私文書偽造罪」
に当たるかどうかが問題となります。
では、これらの罪について、ポイントとなる構成要件を見てみましょう。
まず、①についてです。
「人を欺いて財物を交付させた」か「財産上不法の利益を得」た場合に犯罪が成立しますが、面接時、または内定をもらった時には「財物」や「財産上」の利益は嘘をついた人にはありません。
でも、「給与をもらうならそれは財物じゃないの?」とも思いますが、給与は労働の成果に対する報酬としてもらうものなので、「人を欺いて」「不法な利益」とも言えません。
なので、詐欺罪にはならないのです。
例えば、学歴を偽ってアルバイトをしても、1時間しっかり働けばその分の時給は払われても問題ないですよね。この理屈は正社員でも派遣社員でもパートでも変わりません。
一方で、②については成立する場合があります。
ポイントになるのは「他人の印章若しくは署名を使用」の部分です。
つまり、自分の名前等の情報が正確であれば、学歴を偽ってもこの罪は成立しません。
逆に、本名を偽って他人の名前を履歴書に書いた場合には、この罪が成立する可能性が出てきます。
履歴書詐称が犯罪にならないとしても…
ここまで見ると「履歴書に嘘を書いても犯罪にならないじゃん。」と思う人もいるかもしれません。
ですが、犯罪にならなくても別の形でペナルティは出てきます。
例えば、「嘘の情報を書いているような人を雇っていたくない」との理由で解雇されることもありえます(この点に関しては、労働法上の問題が絡んできますが、ここでは省略します)。
また、解雇とまでは行かなくても、そんな職場で変わらず働くのは精神的に辛いでしょう。
履歴書に嘘の情報を書くと罪になるのか?-まとめ-
ここまでの内容をまとめると、「犯罪にはなりにくいし、解雇されるのも場合による」ということになります。
かといって、履歴書に嘘を積極的に書くべきではないことは倫理上、マナー上当たり前のことです。
このような履歴書の嘘は、源泉徴収のときなどに会社にバレることがよくあるそうですし、バレたらマズいこともみなさん感覚的に把握しているはずです。
そもそも、そこまで背伸びして入った会社で仕事し、活躍することができるのでしょうか?
私は仕事も履歴書も誠実であるのが一番だと思いますよ。